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なぜ公園から子どもがいなくなったのか:都市公園設置の意図からのレポート

1.子どもと公園

 文部科学省が行っている「体力・運動能力調査」によると、年々子どもの体格は向上しているにも関わらず、体力低下傾向にあることが報告されている。その要因として「三間」の減少が注目されている。しかしながら、外遊びの空間の縮小化が、子どもの外遊びを減少させ、体力低下につながったという見方ははたして本当なのだろうか。主たる遊びの空間とされる公園に目を向けると、既存の広さに縮小化は見られない。東京都を例に挙げると、都市公園の数は昭和32年では320ヵ所であったにもかかわらず、平成23年では11,217ヵ所となっている。つまり、外遊び「空間」の縮小化が、子どもの外遊びを減少させ体力低下につながったという見方は一部にすぎず、空間を原因とする背景については、何らかの別の理由が存在しているものと推測される。

 平塚・引原(2015)は、その要因として、現在の子どもには公園という遊び空間そのものの魅力が失われているのではないかと指摘している。例えば、放課後における児童の遊び場所について調査した安恒(2009)の報告によると、どの学年も「自宅」や「友達の家」など室内空間を選択した者が過半数を占める。さらに、自宅外の空間では「公園」よりも「学校」と回答する者が多くみられている。

2.公園の教育的意図

 都市公園は、経済規模に見合う「生活の豊かさの向上」、すなわちゆとりと豊かさを感じる生活資本の整備および充実という課題の中で成立してきた。都市装置というインフラの充足に対する社会的欲求が高まり、なかでも都市公園・緑地などの緑環境に関するニーズは従来の自由時間の増大やレクリエーションなど個人の余暇生活の充実のためだけでなく、長寿・福祉社会への対応、安全で快適なまちづくりなど社会全体においても必要不可欠な根幹施設として位置づけられるようになった。そのような社会的要請のなかで、都市公園が整備されていく。

 子どもへの文脈に目を向けると、昭和40年当初から、次に挙げるような子どもを取り巻く環境の急激な変化に対して、子どもの遊び場=児童公園の整備に対する要望が出されるようになった。

  • 家庭における庭が喪失し、子どもが手近に利用できる空地がなくなったこと
  • 都会における自動車交通が激化し、子どもが手近に利用できる空地がなくなったこと
  • 学校運動場が開放されなくなったこと

 このような社会情勢を背景として、昭和47年に都市公園の緊急かつ計画的な整備の促進、都市環境の改善を図ることを目的とする「都市公園等整備緊急措置法」が制定された。このような、昭和40年代の都市部における子どもの地域環境の急変を背景とした、子どもの遊び場の整備に対する要望をきっかけに、 「都市公園等整備緊急措置法」 に基づく「旧称児童公園」の整備促進が図られた。

 しかしながら、その後の著しい都市化の進展、都市構造の変化、高齢化の進展、国民の余暇ニーズの変化・多様化、環境問題の顕在化等を背景として、国民生活を取り巻く状況や国民の価値観、ライフスタイル等に大きな変化をもたらすようになった。このような社会状況から平成5年6月、都市公園法施行令が一部改正され都市公園制度が改められた。「もっぱら児童の利用に供する都市公園」と規定され、主な利用対象を児童としてきた児童公園については、少子高齢化の進展により、児童公園の利用者や利用方法が変化してきていること、地域の実状や創意工夫が活かされたものとすることについての要望が高まってきていることなどから、児童を含む広い年齢層の住民のライフスタイルに適する公園として整備することに変更され、区分名称も「街区公園」となった。

 旧施行令では、主な利用者である「児童」の年齢について特に規定していないが、児童公園の整備の基本とされていた緑地計画標準では、児童公園を幼児公園、幼年公園、少年公園とに区分し、幼児公園および幼年公園に共通する目的として「児童の『遊戯』の用に供するもの」とされている。このことから、児童公園の主な利用対象年齢は、幼児および11、2歳以下の児童(小学生)とされてきたと考えられる。

 建築基準法都市計画法の影響により、集合住宅のオープンスペースは、北側や中庭といった、日光の照射量が少ない空間に確保されることが多い。このため、住民の交流スペースであると共に、子ども達の遊び場となるべく空間の質は非常に「不健康」な空間となることが多い。

 このように、公園は「子どものため」から「市民のため」へと変容してきた。公園に置かれる遊具も、子どもの遊戯のための遊具から、大人のための健康遊具へと移行し、公園は私たちの認識とは裏腹に、その性格を大きく変容させたものとなっている。


【参考文献】

・東京都総務局統計部(1957~2011)「東京都統計年鑑」http://www.toukei.metro.tokyo.jp/tnenkan/tnindex.htm

・平塚寛之、引原有輝(2015)「街区公園の現状分析ならびに子どもの利用状況と興味関心」、『発育発達研究』67、pp. 1-15

・安恒万記(2009)「都心における子どもの遊び環境について:「放課後の遊び場づくり事業」事例」、『筑紫女学園短期大学紀要』40、pp. 39-51

・申龍徹(2003)「都市公園政策の歴史的変遷過程における「機能の社会化」と政策形成(1)」、法政大学法學志林協會『法学志林』100(2)、pp. 83-163

・一般社団法人日本公園施設業協会 共同研究(2015)「子どもの発育・発達に及ぼす公園の利用に関する研究」https://www.jpfa.or.jp/activity/chousa-kaihatsu/images/02.pdf